地域の恵みで味噌を仕込む、心豊かな時間
地域に根ざした味噌作りに触れる穏やかな体験
近年、旅の目的として、その土地ならではの体験に価値を見出す方が増えています。「体験旅行ナビ」では、訪れる土地の文化や自然に深く触れ、心に残る特別な時間をお届けできるような旅をご紹介しています。
今回は、日本の食卓に欠かせない「味噌」を、その土地に伝わる昔ながらの方法で手作りする体験をご紹介します。単に作るだけでなく、地域の恵みである素材に触れ、発酵という神秘的な営みを感じながら、ゆったりとした時間を過ごすことができるでしょう。
味噌作り体験とは
味噌作り体験では、地域で採れた大豆や、その土地の気候風土に適した麹、自然塩など、厳選された素材を使って、一から味噌を仕込みます。体験内容は施設によって様々ですが、一般的には以下のような工程を体験します。
- 材料の説明と準備: 使用する大豆、麹、塩について、それぞれの特徴や役割、地域ごとの違いなどを学びます。大豆を煮る、麹と塩を混ぜ合わせるなどの準備がされている場合もあります。
- 大豆を潰す: 柔らかく煮えた大豆を、機械や手作業で潰します。マッシャーや足で踏むなど、昔ながらの方法を体験できる場所もあります。この時、大豆の温かさや香りを直に感じることができます。
- 材料を混ぜ合わせる: 潰した大豆に、麹と塩を混ぜ合わせます。素手で行うことが多く、材料の感触や温度を肌で感じながら、均一になるように混ぜていきます。
- 味噌玉を作る・容器に詰める: 混ぜ合わせた材料を、空気を抜きながら団子状（味噌玉）に丸め、保存用の容器（樽やホーロー容器など）に投げ込むように詰めていきます。これは空気を抜いてカビの発生を防ぐための昔ながらの知恵です。
- 表面をならす・保管: 詰め終わったら表面を平らにならし、カビ防止のために塩を振ったりラップを敷いたりします。その後、持ち帰って自宅で保管し、数ヶ月から一年かけて発酵・熟成させます。
体験の所要時間は、内容にもよりますが、概ね2時間から3時間程度です。多くの施設では、事前に予約が必要となります。費用はおおよそ一人あたり5,000円から10,000円程度で、材料費や持ち帰り容器代が含まれていることが一般的です。
体験から得られる感動と学び
この味噌作り体験からは、単に食品を作るという以上の、様々な感動や学びを得ることができます。
手仕事の温かさと達成感
自分の手で材料に触れ、混ぜ合わせ、容器に詰めるという一連の作業は、どこか懐かしく、心地よいリズムがあります。土や植物に触れるガーデニングや農作業のように、五感を通して素材と向き合う時間は、心を落ち着かせ、無心になれるひとときです。作業を終え、味噌が詰められた容器を前にした時には、大きな達成感を感じられることでしょう。
発酵という神秘、自然の恵みへの感謝
味噌は、麹菌の力によって大豆が発酵して生まれます。目には見えない微生物の働きによって、材料がゆっくりと変化し、風味豊かで滋味深い食品へと生まれ変わる過程は、まさに自然の神秘です。この体験を通じて、自然の恵みと、それを活かす人間の知恵、そして発酵という営みへの深い理解と感謝の気持ちが生まれるかもしれません。
地域の食文化と歴史への理解
味噌作りは、その地域の気候、風土、食習慣と深く結びついています。使用する大豆や麹の種類、塩分濃度、仕込み方など、地域によって様々な特徴があります。体験を通して、その土地の味噌の歴史や、受け継がれてきた食文化、人々の暮らしに触れることができるでしょう。地域の講師や住民との交流は、旅をより一層豊かなものにしてくれます。
育てる楽しみと味わう喜び
仕込んだ味噌は、すぐに完成するわけではありません。自宅に持ち帰り、数ヶ月から一年かけてゆっくりと熟成させます。容器を時々確認したり、天地返しをしたりと、まるで育てるように手をかける時間も楽しみの一つです。そして、待ちに待った完成の時。自分で手作りした味噌を使った味噌汁や料理を味わう時の格別な美味しさは、忘れられない旅の思い出となるはずです。
体力面への配慮
味噌作り体験は、比較的体力的な負担が少ない活動と言えます。
- 多くの工程は、座ってまたは立ったまま、無理のない姿勢で行うことができます。
- 大豆を潰したり混ぜたりする作業は力を多少使いますが、自分のペースで行えますし、施設によっては機械補助がある場合や、スタッフがサポートしてくれる場合もあります。
- 重い材料や容器の運搬は、通常スタッフが行うか、短距離・少量で済むように配慮されています。
- 体験場所は屋内の施設であることが多く、天候に左右されずに安心して参加できます。
長時間の歩行や激しい運動は伴いませんので、体力に自信のない方や、ゆったりと過ごしたいと考えている方にもお勧めできる体験です。予約時に施設の設備や作業内容について確認しておくと、より安心して参加できるでしょう。
まとめ
地域の恵みを使い、自分の手で味噌を仕込む体験は、日本の食文化に深く触れ、手仕事の温かさや自然の神秘を感じられる、心豊かな時間をもたらしてくれます。完成した味噌を自宅で味わう楽しみも含め、旅の思い出が長く心に残る特別な体験となるでしょう。
全国には、それぞれの地域で特色ある味噌作り体験を提供している施設がたくさんあります。ぜひ、次の旅では、その土地ならではの味噌作り体験を探してみてはいかがでしょうか。